万引きは小売業界における経営を大きく脅かす深刻な問題です。警視庁が発表している『警察白書』によると、令和7年(2025年)における全国の万引き認知件数は10,5135件となっています。
この数字は平成25年(2013年)の126,386件をピークに年々減少してはいますが、ここ3年は連続で増加。依然として万引きの発生件数は非常に多く、実際に検挙に至った数も認知件数の70%前後にとどまっているのが現状です。さらに、これはあくまで認知されている件数であって、実際にはこの10倍にものぼる被害が発生していると推定されています。
このような、全国的にはびこる犯罪である万引きですが、きちんと万引き対策を講じることでそのリスクを最小限に抑えることが可能です。万引き防止策を実施することは、店舗の安全を守り、経営の安定を促進する上で非常に重要です。この記事では、効果的な万引き防止策を9つ紹介し、小売店が直面する損失を減らす方法を解説します。

■このロケーションはストックフォト撮影用にレンタルしたうえで撮影を行っています。
小売店における万引き被害は、店舗経営にとって重大な問題です。直接的な商品損失に加え、対策の実施や管理コストの増加など間接的な損失も小さくありません。まずは犯人像別の様々な手口と万引きされやすい店舗の特徴を抑えていきましょう。
万引き犯は様々な手口で行動し、その対策もさまざまです。大きく分けて3種類の犯人像のパターンが挙げられます。①単独犯、②複数犯、③内引き、つまり従業員が関与するパターンです。さっそく見ていきましょう。

単独犯による万引きは、動きが素早く、目撃されにくい点が特徴となります。多くの単独犯は、人目が少ない時間帯を選んで犯行に及ぶことが多く、また店内の視線が届きにくい商品棚の角やお手洗い付近などの死角となる場所を利用する傾向にあります。また、カゴマイバッグを使う事が増えてきた近年では、未会計商品をマイバッグなどに入れて、会計済みかのように堂々と退店するケースも少なくありません。
複数犯による万引きは、さらにその対策を複雑にします。「連携」した犯行が特徴で、犯人たちが役割を分担し、一人が店員の注意を引きつける間にもう一人が盗みを働くという方法が代表的です。例えば、一人が商品に関する質問で店員を忙しくさせている間に、別の犯人が防犯カメラの死角で商品を手に入れるケースなどが挙げられます。その他にも、共犯者が実行犯を囲むなどして、店員や他の顧客の視線を遮る手口や、外部につながる小窓などから商品を手渡ししてしまう手口なども挙げられます。


従業員による万引きは、内部防犯対策の甘さが原因で起こることが多いです。従業員は店舗のセキュリティシステムや運営フローに精通しており、防犯対策の盲点を熟知しているため、内部の人間による犯行は外部犯よりも発見が難しい場合がよくあります。
具体的には
①営業時間中や営業後に、死角にある商品、管理体制の薄い在庫商品を盗む
②搬入や棚卸し、顧客へ商品を引き渡す際など、所在のあいまいになりやすいタイミングで商品を盗み、帳簿の改ざんや隠ぺいを行う
その他にも商品ではなく、正規の会計や返品処理を装って直接レジ内の金銭を盗むケースなどもあります。
万引きは小売店における避けられない課題ではありますが、特定の環境下で特に発生しやすいことが分かっています。店舗運営者は、被害に遭いやすい店舗に共通する特徴を店内から排除することが課題となります。さっそく以下に主要な特徴を3つ挙げさせていただきます。
万引き犯にとって、店内に死角がたくさんある環境は、人目を避けて行動するのに非常に都合が良くなります。①店内の棚の配置が密である、②棚の高さが高く向こう側が見渡せない、③通路が狭い、といった環境は死角を多くうみだします。商品陳列を工夫し、店舗内の見通しを良くすることで、従業員が顧客をより効果的に監視できるようになり、万引きを未然に防ぐ効果が期待できます。


従業員の数が少ない店舗では、万引き被害が増える傾向にあります。この理由は明確で、従業員が少ないと監視の目が届きにくくなるため、万引き犯が行動しやすい環境ができあがってしまいます。特に繁忙期やセール時など、従業員が忙しい時には、店内の一部が監視不足となりやすく、万引きの発生率を高める可能性があります。実際に、従業員の配置が不十分な店舗では、防犯カメラが設置されている場合でも盗難被害が頻発するという調査結果が出ています。このように、従業員の数が少ないことが万引き犯の「温床」となりうるため、適切な人員配置により、人的監視を強化することが万引き防止の重要な対策となります。
整理されていない商品陳列は万引きを誘発することが多くあります。散乱している商品は、「店舗側が在庫管理をしっかりできていない」と外部から認識される場合があり、それが犯罪心理を刺激する原因になり得ます。多くの人が利用するスーパーや雑貨屋さんはもちろん、特に化粧品のような万引きされやすい商品・高額商品を販売する百貨店、ドラッグストア、アパレルショップなどは、商品陳列も万引き対策において重要となります。商品が整頓されずに散らばった状態で放置されている場合、監視が甘いと判断され、ターゲットとして選ばれやすくなります。店舗を運営する際には、商品の陳列方法も防犯策の一環として意識しましょう。

ここからは万引き防止策をご紹介いたします。万引き防止策は大きく分けて2つ、ツールを活用した方法と人的対策があります。これらを組み合わせてより強固な防犯体制を築く事が理想的な万引き防止策と言えます。
万引き防止策として様々なツールやグッズの活用は非常に有効です。これから、万引き犯に対する明確な警告となり、抑止力を高めるために重要な役割を果たす万引防止グッズやツールを4つご紹介いたします。

防犯カメラの設置は、万引き予防策の中でも基本中の基本とされています。その理由は、犯人が、監視されていることを知ることで、犯行をためらわせる効果が期待できるからです。例えば、多くの小売店では、入口や商品棚の上部に防犯カメラを設置し、「監視カメラ作動中」というサインを明確に表示しています。これにより、店内での犯罪意識を高め、犯罪の抑止効果を実現しているのです。また、万引きが発生した際の、映像による証拠保全はもちろん、録画を確認しての後日逮捕に不可欠な犯人の特定にも大いに役立ちます。AIなどによる顔認証システムを併用できる製品もあり、非常に優れた防犯製品として日々進化しています。
防犯ミラーの設置は、店内の死角を減少させることにより、犯罪の抑止効果が期待できます。特に、店の入口や狭い通路、商品が密集しているエリアに防犯ミラーを設置することで死角が減り、万引き犯が行動しにくくなります。事実、防犯ミラーがあることで店内のあらゆる角度からの視界が確保されるだけでなく、犯行の瞬間を視認されているのではないか、といった心理的圧迫感も手伝って、犯罪行為に及びにくくなるのです。


万引き犯が防犯カメラや防犯ミラーをかいくぐり、商品を隠し持つことができても、退店前に引き止めることができれば、被害を抑えることができます。未精算の商品につけられたタグをセンサーで検知し、発報する防犯ゲートは、万引きにおいて大きな抑止力となります。実際にあるアパレル店舗では防犯ゲートを設置し、防犯タグ(万引き防止タグ)をつけたことで万引きなどの被害額(不明ロス額)が半分以下に減少したという報告もあります。
万引き防止ポスターやPOPを店内に掲示することは、来店者や従業員の防犯意識を高め、万引き行為への抑止力を発揮します。このような防犯対策は、万引きを検討している人々にとって、行為が発覚するリスクが高いと感じさせるため効果的です。たとえば、店の入り口やレジ周辺など、来店者の目につきやすい位置に「監視カメラ作動中」や「万引きは犯罪です。発見次第警察に通報します」といったメッセージの掲載された万引き防止ポスター、POPを設置、「目」を意識させます。これらは、店舗側が監視していること、そして万引きが犯罪行為であることの認識を促し、潜在的な万引き犯に警告する役割を果たします。対策を講じる際は、定期的にメッセージの内容を更新したり、視覚的に訴えるデザインを選ぶなど、防犯ポスターやPOPをより効果的に活用することが重要です。

■撮影用にレンタルしたスペースにて撮影を行っています。■万引き防止ポスターは撮影用にデザインした小道具です。イメージ写真です。

従業員による万引き「内引き」に関して、入退店時などにおける手荷物の検査が非常に有効です。人の目による監視ももちろん有効ですが、時間の関係や人件費の関係から形骸化してしまうケースも少なくありません。顔の認証と手荷物のチェックをセルフで行うことができる手荷物検査システムは、未実施者への通知で抜けもれを防ぎ、記録を行うことで形骸化はもちろん、犯罪心理に働きかけ、犯行も防ぎます。
人による万引き防止策、つまり人的対策は万引き抑止に効果的であり、店員による積極的な声かけや警備員の定期的な巡回、さらに万引きGメンのような専門家への依頼が有効な手段として挙げられます。これらの対策は、万引き犯に対して店舗側が警戒していることを示し、被害を未然に防ぐことが期待できます。
店員による声掛けは、万引きの抑止に非常に効果的な方法です。万引き犯は自分の行動が認知されていると感じると、犯行を諦める傾向があります。顧客に対して適切なタイミングで声をかけることで、「見守られている」という意識を彼らに植え付けることができるからです。例えば、アパレルショップなどでお客様の入店時や商品を手に取っている際、「いらっしゃいませ」「お探しの商品はございませんか?」などと声をかけることが、店員の存在を知らせることに繋がります。店長はもちろん、スタッフひとりひとりが責任感を持つことで、盗難被害を未然に防ぐことができます。


店内の安全と秩序維持のため、警備員による巡回は効果的な万引き防止策とされています。警備員が店内を定期的に巡回することで、犯罪抑止の効果が期待できます。さらに、不審者の発見や緊急時の迅速な対応が可能になり、店舗の安全性を高めることができます。例えば、大型の小売店では、特に混雑する時間帯や曜日に警備員による巡回を強化することで、万引きの発生を大幅に減少させており、この取り組みが万引き対策として非常に有効であることが実証されています。
万引きGメンは、万引きのプロフェッショナルであり、不審者を見分ける高度な能力と、事態に即した迅速な対応スキルを持ち合わせています。万引きGメンを導入した小売店の中には、被害を前年比で50%も削減できた例も報告されています。高度な犯罪技術を持つ万引き犯であっても、万引きGメンによって犯行を見抜かれれば、退店前に引き留めることが可能になります。


万引き犯への対応においても、内引きを未然に防ぐためにも、従業員教育の徹底は必要不可欠です。管理責任者による万引き発生時の対応や、通常時の万引き防止に効果的な接客方法の教育を行うことは、従業員を守るだけでなく、防犯意識の向上に貢献します。万引き被害による影響などを共有し、万引き被害を全従業員で徹底的に防止する姿勢を見せる透明性の高い店舗運営は、内引き行為を思いとどまらせる心理的抑止力も期待できます。
本記事では、小売店における万引き対策について、様々な角度からのアプローチを取り上げました。犯人像別の手口の理解、万引きに遭いやすい店舗の特徴の把握から、具体的な防止策の導入まで、幅広い情報を提供しました。万引き対策として、ツールを用いた万引き防止策、人による万引き防止策とその効果をご紹介いたしました。
これらの対策は、万引き被害を抑制し、店舗の安全性を高めるために非常に重要です。しかし、万引き対策の効果を最大化するためには、各店舗が自身の状況に合わせた対策を選択し、実施することが欠かせません。万引き防止策の導入を検討している小売店の経営者様は、本記事で紹介した内容を参考にして、自店に適した方法の選定と実践、そして定期的な見直しを心掛けてみてください。
万引き犯の手口は日進月歩で進化しており、これに対抗するためには、防犯技術や手法の最新情報を常にキャッチアップする必要があります。また、他店舗の成功事例から学ぶことも、非常に有効です。
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国の指針
犯罪予防や安全確保のための顔識別機能付きカメラシステムの利用について 資料一覧 |個人情報保護委員会 (ppc.go.jp)
業界団体としての指針
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