企業の命綱を守る!ランサムウェアとサプライチェーン攻撃の対策

現代のビジネスにおいて、企業の成長を支える重要な基盤であるサプライチェーンは、ランサムウェアとサプライチェーン攻撃が組み合わさった新たなリスクに直面しています。

攻撃者はセキュリティ対策が不十分な取引先を経由し、日常的に利用される通信経路から物流や生産システムへ侵入します。その結果、被害は情報漏えいにとどまらず、工場停止や出荷停止など、事業全体の中断という深刻な事態に発展します。

もはや「自社だけ守れば安心」とは言えない時代です。こうした連鎖的な脅威から事業を守るためには、従来の防御策を見直し、被害を想定したサプライチェーン・レジリエンス戦略への転換が不可欠です。

本コラムでは、流通停止の危機を乗り越えるための具体的な防御策と、万一の際に回復力を高める方法を分かりやすく解説します。

 

サプライチェーン攻撃とは

特長と内容

サプライチェーン攻撃は、標的企業そのものではなく、取引先や委託先といった外部パートナーを経由して侵入する手法です。攻撃者は、セキュリティ対策が比較的甘い中小規模のサプライヤーを突破口にし、そこから本命の企業ネットワークへ侵入します。
さらに、信頼関係を悪用し正規の通信を装うため、防御が難しいという特徴があります。近年ではランサムウェアと結びつくケースも多く、物流や生産ラインの停止といった連鎖的かつ甚大な被害をサプライチェーン全体にもたらします。

攻撃が増加している背景

企業のIT環境は急速に複雑化し、クラウドや外部サービスを活用する割合が増えています。さらに、競争力強化のためにDX(デジタルトランスフォーメーション)が進み、クラウドサービスの導入、外部ベンダーとの連携、IoT機器の活用などにより、業務プロセスはデジタル化・分散化しました。

こうしたデジタル化の進展は、攻撃者の侵入経路をさらに広げることにもつながります。従来は自社ネットワークを守ればよかったものが、今では複数の外部システムやサービスが密接に結びついており、攻撃者は「最も弱い接点」を突くことで、容易に侵入できるようになっています。
IPAが発表した「情報セキュリティ10大脅威2025」では、組織向け脅威の第2位に「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」が選ばれており、2016年以降7年連続でランクインしました。これは、攻撃の効率性、攻撃者の利益の拡大、そして対策の困難さが考えられます。

順位
「組織」向け脅威
初選出年
10大脅威での取り扱い
(2016年以降)
1
ランサム攻撃による被害
2016年
10年連続10回目
2
サプライチェーンや委託先を狙った攻撃
2019年
7年連続7回目
3
システムの脆弱性を突いた攻撃
2016年
5年連続8回目
4
内部不正による情報漏えい等
2016年
10年連続10回目
5
機密情報等を狙った標的型攻撃
2016年
10年連続10回目
6
リモートワーク等の環境や仕組みを狙った攻撃
2021年
5年連続5回目
7
地政学的リスクに起因するサイバー攻撃
2025年
初選出
8
分散型サービス妨害攻撃(DDoS攻撃)
2016年
5年ぶり6回目
9
ビジネスメール詐欺
2018年
8年連続8回目
10
不注意による情報漏えい等
2016年
7年連続8回目

参照:情報セキュリティ10大脅威 2025 | 情報セキュリティ | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

ランサムウェアがサプライチェーンを狙う理由

ランサムウェアがサプライチェーンを狙う攻撃は2010年ごろから見られましたが、2020年以降からは特に増加しています。ここでは、ターゲットにされてしまう理由を3つのポイントに分けて解説します。

1. 強固な防御を迂回できる「ルート」である

大企業や重要インフラ企業は、多額の投資でセキュリティを強化しており、直接侵入は困難です。そこで攻撃者は、標的となる企業と信頼関係にある外部パートナーやベンダーを経由する間接ルートを選びます。
中小の取引先は予算や人材が限られ、セキュリティ対策が不十分になりやすいです。こうした弱点を経由することで、最終ターゲット企業の強固な防御を容易に迂回し、内部ネットワークの侵入が可能となります。

2.被害の連鎖で「高額な身代金」を要求

ランサムウェア攻撃の最大の目的は、短期間で確実に高額な身代金を回収することです。特にサプライチェーンを狙った攻撃では、物流や生産を支えるシステムが暗号化され、工場の稼働停止や出荷の中断など、深刻な事業障害が連鎖的に発生します。

これらの影響は情報漏えいよりも企業の事業継続性に直結するため、被害企業は早期復旧を最優先せざるを得ず、結果として攻撃者の要求しやすい状況が生まれます。攻撃者にとってサプライチェーンは、より大きな交渉力と収益性を確保できる可能性となっているのです。

3.企業単独での対策には限界がある

企業のセキュリティ境界は、取引先やクラウドサービスなど外部の環境へと広がり、自社では管理しきれない領域のリスクが常に存在します。さらに、取引先ごとのセキュリティ水準を継続的に評価・監査し、必要に応じて改善を求めるには、多大なコストと専門的なリソースが必要です。

とりわけ中小企業では、こうした負担が大きく、十分な対策を講じることが難しいのが現状です。その結果、サプライチェーン全体の脅威を根本から排除することは依然として困難であり、リスクは継続的に残り続けています。

サプライチェーン攻撃の最近の動向と手口

サプライチェーン攻撃は、企業の防御網をすり抜ける効率的な手法として利用され、近年その手口は一段と高度化しています。続いては、攻撃の最新動向や具体的な手口について整理し、現状の脅威をより深く理解するためのポイントを解説します。

1. ソフトウェア・サプライチェーンの深層化

サプライチェーン攻撃は、近年、単なる取引先侵害に留まらず、ソフトウェアのより深層部を狙っています。攻撃者は、開発に用いられるオープンソースライブラリや、製品を生成するビルド環境そのものを標的にします。これにより、企業が受け取る正規の製品に、製造段階でマルウェアが混入されます。この手法は、一つの脆弱性から世界中の多数のアプリケーションに影響を及ぼし、従来の防御策での検知を極めて困難にしています。

2. ランサムウェアとの結合による複合脅威

サプライチェーン攻撃は、高額な身代金を狙うランサムウェアと結びつくことで、脅威を最大化しています。
攻撃者は、セキュリティが弱い取引先を経由して侵入し、物流システムや生産管理システムを標的にします。その結果、工場稼働の停止や製品出荷の遅延といった物理的な事業停止を引き起こします。これにより、企業はシステム復旧と事業継続の圧力から、身代金支払いへの強い圧力を受けることになります。

サプライチェーンに及ぶ影響

サプライチェーン攻撃を受けると、企業はさまざまな被害を被ります。場合によっては、事業継続が困難になるほど影響を受けることも少なくありません。ここでは、攻撃が企業にもたらす代表的な被害を2つの視点に分けて解説します。

物流停止による経済的損失

従来のサイバー攻撃とは異なり、ランサムウェア攻撃は、最終メーカーではなくその部品を供給する取引先のシステムを狙います。取引先の受発注システムや在庫管理システム(SCM)が機能停止に追い込まれると、メーカー側へ部品の納品指示や出荷情報が届かなくなります。その結果、工場では必要な部品が欠品し、特に「ジャスト・イン・タイム」生産方式を採用する企業にとって、即時的かつ致命的な生産ラインの停止を招きます。生産ラインの遅延は、情報漏洩とは比較にならないほどの甚大な経済的損失をもたらします。工場停止中の人件費、固定費、逸失利益など、時間と共に莫大なコストが発生するほか、製品納入の遅延による信用の失墜は、短期的な損失だけでなく長期的なビジネスチャンスの喪失につながります。

情報漏えいリスク

サプライチェーン攻撃により、取引先経由で設計図や顧客情報などの機密データが流出すると、企業の信用失墜や取引停止、法的責任に直結します。ブランド価値の低下や市場シェア喪失など、長期的な経営リスクも伴います。対策としては、ゼロトラストモデルの導入、取引先を含めたセキュリティ評価、暗号化や多要素認証の徹底、そしてBCP策定による迅速な復旧体制の構築が不可欠です。

企業が取るべきレジリエンス戦略

サプライチェーン攻撃から自社を守るためには、企業単体だけでの対策では不十分です。ここでは、攻撃の性質を踏まえた対策方法について解説しましょう。

可視化とデータ連携の強化

企業が取るべきサプライチェーン・レジリエンス戦略において、可視化とデータ連携の強化が被害防止と迅速対応の基盤となります。まず、外部パートナーの依存関係とアクセス権限を把握するサプライチェーン・マッピングを実施し、セキュリティ評価によるリスクスコアリングで「最も弱い部分」を特定します。次に、取引先でインシデントが発生した際に即時通知される緊急情報共有体制を契約に基づき整備します。さらに、自社と主要パートナーの監視データを統合し、AIや分析ツールで異常を早期検知する仕組みを構築することで、連鎖的な影響を瞬時に把握し、判断と対応のスピードを高めます。

バックアップと迅速な復旧体制

万が一システムが停止しても、物流が完全に止まらない、あるいは短時間で復旧できる体制を整えるには、復元力が重要です。
基本となるのは、ランサムウェア耐性のあるバックアップを確保し、データをネットワークから隔離して暗号化被害を防ぐことです。また、目標復旧時間(RTO)を物流システムごとに設定し、定期的な復元訓練で手順と所要時間を検証し、ダウンタイムを最小化します。

さらに、主要サプライヤーや倉庫の停止を想定し、代替調達先や手動運用手順を事前に策定・文書化することで、システム障害時でも業務を継続できる体制を構築します。これらの取り組みにより、事業の安定性と回復力を強化できます。

経済産業省が主導する『サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度』が企業へもたらす影響

サプライチェーン攻撃の増加により、企業単独での防御には限界があることが明らかになっています。こうした状況を受け、経済産業省は「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度」の構築を進めており、中間取りまとめでは制度の方向性が示されています。この制度は、取引先を含めたセキュリティ水準の可視化と、業界全体での底上げを目的としています。単なるセキュリティ対策の指標にとどまらず、企業の競争力を左右する新たな基準となります。さらに、早期に対応することで、リスク低減だけでなく取引機会の拡大やブランド価値向上という大きなメリットをもたらします。

制度の概要

<評価スキーム>企業のセキュリティ対策を★1~★5の段階で評価
★1~★3:自己評価
★4~★5:第三者評価による信頼性確保

<評価項目>情報セキュリティ基本方針の策定、EDR/NDR導入、BCP・DR訓練など

<目的>取引先を含めたセキュリティ水準の可視化と業界全体の底上げ

<国際標準との整合性>ISO 27001、NIST CSF、自工会ガイドラインなど既存フレームワークをベースに設計

企業への影響

評価制度は単なるガイドラインではなく、今後は取引先の選定や入札条件に組み込まれる可能性が高く、対応の遅れはビジネス機会の損失につながります。特に★4以上の評価を取得することは、顧客やパートナーからの信頼を得る重要な分岐点となり、企業の競争力強化に直結します。特にサプライチェーンを構成する中小企業はリソースの余裕が少なく、自社に最適な対策を判断することも難しいため、評価制度を指針として取り入れるメリットが非常に大きいと言えます。

今から始める準備

現状のセキュリティ体制を評価し、制度の要求事項との乖離を明確にしたうえで、EDRや高度な脅威検知の導入、BCP強化などを含む改善計画を策定し、第三者評価に備える体制を整えることが重要です。さらに、契約書にセキュリティ要件を明記し、情報共有体制を構築するなど、取引先との連携を強化することで、サプライチェーン全体のリスク低減と制度対応を両立させることが求められます。

参照:「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度構築に向けた中間取りまとめ」を公表しました (METI/経済産業省)

まとめ

サプライチェーン攻撃は2020年ごろから増加している手口であり、被害が広範囲に及ぶことが特徴です。
物流という企業活動の基盤を守るため、経営層がリスクと責任を理解し、協調体制への投資を主導することが重要です。社員の基本的なセキュリティ運用に加え、取引先を含めた対策確認や監査の継続も欠かせません。実効性のあるレジリエンス戦略を構築するためには、人・システム・技術など多層的なセキュリティ対策が不可欠です。

当社が提供するランサムウェア対策ソリューション「Halcyon」 は、この多層防御において高い効果を発揮します。AIによる振る舞い検知で初期段階から攻撃の兆候を捉えられるほか、侵入を許した場合でも復旧支援機能や隔離機能により被害拡大を抑制し、迅速な回復を強力にサポートします。

また、当社ではお客様の課題に応じて最適なセキュリティサービスやネットワークシステムを、豊富な製品ラインナップからご提案しています。情報セキュリティ対策についてお困りの際は、お気軽にお問い合わせください。

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